中小企業診断士が、さまざまな「経営について相談したい」にこたえます
経営者はストレスとプレッシャーの連続!
よき相談相手は経営者のストレスとプレッシャーを軽くしてくれます。この記事では相談できる内容や、言葉にしにくい心持ち(心理面)に応じた、相談窓口を案内いたします。
資金のやりくり、従業員の問題、売上の伸び悩み、品質やコスト、納期への対応…
中小企業の経営者は大企業と比べると人員も資金も限られていますから、経営者ご自身でなんとかしなくちゃならないと思うと…本当に大変です。
業種、売上や従業員数などの企業規模、企業のライフステージ…おかれている状況において経営に関するお悩み・お困りごとはさまざまですよね!
中小企業の課題は、中小企業白書(2023年版)によると
「人手不足と賃上げ促進」「物価高にともなう価格転嫁の定着」「生産性向上に向けた投資やイノベーション」
が挙げられていますが、実感ベースとしてはもっともっと身近で具体的なお悩みやお困りごとが多いのではないでしょうか?
ふだんのお悩みごとやお困りごとはどこに、誰に相談されていますか?
「経営相談」相談したい内容はさまざま
経営に関する悩みや困りごとなど相談したい内容は、事業のライフステージ(創業期-成長期-成熟期-衰退期)の違いによってもさまざまです。
お悩みやお困りごとを大きく分類すると
■経営ビジョンや経営戦略にかかわる分野
■ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源にかかわる分野
に分類できるでしょう
経営ビジョンや経営戦略にかかわる分野
・どのようにして企業を成長させるか、どの方向に進むべきか、ビジョンや長期的な目標の設定に関する悩み
・自社の製品や商品、サービスをだれに・どうやって提供し、事業を成立させていくか
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)にかかわる分野
ヒト:人的資源
採用と適切な人材の確保と育成、労働法や労働環境に関する法規制への対応、労務コストの削減など
モノ:物理的資源
いまある固定資産(設備や土地など)の有効活用するにはどうしたらいいのか
新しい設備を導入したいけれどどうしようか悩んでいる
カネ:財務資源
新規事業の立ち上げや拡大、設備投資などに必要な資金の調達と、それを効果的に管理するにはどうしたらよいか
資金繰りを改善したい、キャッシュ不足にいつも悩まされている
情報:情報資源
特許や他社がマネできない技術を活用したいけれどどうしたらよいだろうか
昨今のITやデジタル化への対応、技術の進化やデジタル化の浸透によるビジネス環境の変化への対応が必要だ
経営相談はどこでできる?
「メンター」と呼ぶことのできる人がいれば、まずは相談ですね。
ビジネス経験豊富な経営者の先輩、個人的なつながりで得たメンターは実践的なアドバイスや経験にもとづく最も有用な意見を聞くことができそうです。
また信頼のおけるビジネスパートナー(金融機関、パートナー企業、取引先など)の意見も、自身のビジネスを見直す上で重要です。
ただ、どなたにもメンターや適切なビジネスパートナーがいるとは限りません。起業・開業前や創業期の場合はなおさらでしょう。
その場合は相談内容や心持ち(心理面)、費用によって次のところで相談にのってもらえます。
- 産業団体や商工会議所
- 専門家(コンサルタントやアドバイザー、士業の方々)
次章以降で相談窓口の一覧と特徴をまとめました。
経営相談窓口の一覧
相談できる窓口はどんなところがあるの?大きくわけて2つあります。
「公的な機関」と「専門家」です。
「公的な機関」
- 商工会議所
- 中小企業基盤整備機構
- よろず支援拠点
「専門家」
- 弁護士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 司法書士
- 中小企業診断士
経営相談窓口の特徴
つぎにそれぞれの相談窓口の特徴についてお知らせします。
相談内容や費用面を参考にしながら、ご自身にあった相談窓口を選んでみましょう
産業団体や商工会議所
経営相談してみたいものの、いきなりはお金を払いたくないという方もいるでしょう。
そんな方には、無料で経営相談できる窓口の利用がおすすめです。
予約をして、決められた時間に、最寄りの地方自治体の商工会議所に行く
初めての方には、やや心理的に不安かもしれませんが、
・複数回にわたって無料で相談にのってくれる
・相談実績が豊富なので参考になる事例が多い
ことが魅力です。
商工会議所
「商工会議所」は、商工業の改善や発展を目的として、一定地区内の商工業者によって組織される、非営利の
経済団体です。
商工会議所は会員制の組織であるものの、非会員でも経営指導員が相談にのってくれます。
無料で経営指導員に相談できるうえに、商工会議所は全国に数多く存在しています。
まだ何もわからない状態でお金を払いたくないという方は、有料で経営相談を受ける前に商工会議所の経営相談を受けてみることをおすすめします。
インターネット検索や地域の自治体のウェブサイトで場所や連絡先を確認し、予約することができます。
中小企業基盤整備機構
「中小企業基盤整備機構」は、中小企業政策を実施する独立行政法人です。
企業の成長ステージや経営課題に応じたさまざまな支援メニューが用意されています。
・融資支援: 中小企業向けの融資制度や金融支援を提供し、資金調達の支援を行います。
・技術支援: 中小企業の技術開発や生産性向上のための支援プログラムを実施し、技術力の向上を支援します。
・国際化支援: 海外展開を希望する中小企業に対して、海外市場の調査や進出支援、海外ネットワークの構築などを支援します。
・地域活性化: 地方創生や地域産業振興のための支援プログラムを展開し、地域経済の活性化を支援します。
・人材育成: 中小企業経営者や従業員のスキルアップや人材育成のための研修やセミナーを提供します。
まさに中小企業を支援する専門機関といえるでしょう。各分野の専門家が無料で何度でも相談に乗ってくれます。
相談方法は対面だけではなく、電話やメールなどもあるため、必ずしも現地に足を運ぶ必要はありません。
本部は東京都千代田区にありますが、各地域に支所(地域本部)を展開していますので、検索して確認できます。
中小企業基盤整備機構 ホームページ
https://www.smrj.go.jp/
よろず支援拠点
「よろず支援拠点」とは、主に中小企業の事業者を対象にして、国が設置している無料の経営相談所です。
各都道府県に1か所ずつ設置されています。
各分野の専門家が、無料で何度でも相談に乗ってくれます。企業の経営課題の解決をサポートするチームが編成されている点が特徴で、相談者の利用満足度は8割超です。
専門家(コンサルタントやアドバイザー、士業の方々)
一般的に、弁護士や税理士など専門家への相談料は数千円から数万円程度から始まることが多いです。
専門家との契約をする際には、相談目的を明確にし、それぞれ専門家の独占業務を理解したうえで、料金体系や費用について十分に説明を受け、納得のいく形で契約を結ぶことが重要です。
弁護士
法律を専門的に扱う専門家です。法律の専門知識を活用して、個人や企業の法的問題を解決し、法的権利や義務を代理し、法的トラブルや紛争の代理を行います。
弁護士への経営相談の内容は次の内容が向いているでしょう。
・事業継承
・合併買収
・債権回収
・事業譲渡
・事業再生
・労務
・クレーム対応
国税局長に対して通知を行った弁護士は、税理士業務を行うことが可能です。依頼する弁護士によっては、法務だけではなく、税務の面でも相談に乗ってもらえます。紛争性のある契約書や協議書の作成・裁判手続きなどは弁護士の独占業務であるため、独占業務に含まれる相談内容であれば弁護士に相談する必要があります。
税理士
税理士は、税務に関する専門家であり、個人や企業の税務申告や税務相談、税務コンサルティングなどを行います。彼らは税法や会計に関する知識を持ち、税務処理や税務問題の解決に専門的に取り組みます。
税理士への経営相談の内容は次の内容が向いているでしょう。
・合併買収
・事業継承
・税務申告
・経理業務
・月次決算
・年次決算
・節税
税務署類の作成や税務の代理・税務相談は、税理士の独占業務です。 独占業務に含まれる相談内容であれば、税理士に相談する必要があります。
社会保険労務士
社会保険労務士は、労働や社会保険に関する法律の知識を使って、人事や労務管理を行う専門職です。
社会保険労務士への経営相談の内容は次の内容が向いているでしょう。
・労働保険
・社会保険
・就業規則
・各種規定
・人事・労務管理
労働や社会保険に関する申請書の作成や手続きの代行は、社会保険労務士の独占業務です。独占業務に含まれる内容を相談したい場合は、社会保険労務士に相談する必要があります。
司法書士
司法書士は、法律の知識を使って、不動産の登記をはじめとする法律事務を処理する専門職です。
司法書士への経営相談の内容は次の内容が向いているでしょう。
・起業の登記
・不動産の登記
・商業登記
・裁判書類
なお、不動産の登記や商業登記などの登記業務は、司法書士の独占業務です。
独占業務に含まれる内容を相談したい場合は、司法書士に相談する必要があります。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業に対して経営課題を解決するための助言を行う専門職です。経営やマーケティング・財務など幅広い知識を有しています。
中小企業診断士への経営相談の内容は次の内容が向いているでしょう。
・事業継承
・合併買収
・起業手続き
・資金調達
・販路の開拓
・人事・労務管理
・事業の多角化
ちなみに、中小企業診断士には他の士業のような独占業務はありません。
経営相談前に整理しておくべきことは?
産業団体や商工会議所は無料で相談にのってくれるケースが多いですが、一回あたりの相談時間は決まっています。専門家への相談は基本的に有料となります。
・頭の中がモヤモヤして何を相談して良いかわからない
・困っている状況から抜け出したくて聞いて欲しいことがいくつもあって、ポイントが絞れない
・こんな簡単そうなこと聞いて大丈夫だろうか、少し恥ずかしいな
相談前にはこのような心持ちの方もいらっしゃるでしょう、思い切って相談てみましょう
よき相談相手はあなたのストレスとプレッシャーを軽くしてくれます。
一回の相談をよりよきものにするために、以下のような点を整理しておくとよいでしょう
全部でなくともよいです、できるところまで整理しておきましょう
すでに事業を始めている方
・企業の基本情報
企業の概要や業種、規模、業績などの基本情報を把握しておくと、相談相手がより適切なアドバイスを提供しやすくなります。
・経営課題の整理
どのような経営課題や悩みを抱えているかを明確に整理しておきましょう。売上の伸び悩み、人材採用や労務管理の問題、資金繰りの悪化など、具体的な問題点を洗い出しましょう。
・目標や希望の明確化
今後の経営方針や目標を明確にしておくと、相談相手に適切なアドバイスや支援を受けることができます。
企業の成長や発展に向けての希望や目標を整理しましょう。
・過去の取組みや結果
過去に行った経営施策や取り組み、その結果や反省点なども整理しておくと、相談相手がより具体的なアドバイスを提供できます。
・資料の準備
必要な資料やデータを事前に整理し、持参しておくと、相談の効率が上がります。
財務諸表や売上データ、人事情報など、関連する資料を用意しましょう。
これから起業・開業しようと考えている方
・起業する目的
まずは、起業する目的をはっきりさせておきましょう。「とりあえず起業したいけれど、手続きが知りたい」ではなく「〇〇を行うために必要な手続きが知りたい」と相談しないと、具体的なアドバイスができないからです。
起業の目的により、手続き方法や資金調達の方法なども異なります。まずは、起業してどんなことを行うのかをはっきりさせ、疑問点を明らかにしてから相談するようにしましょう。
・資金調達の方法
起業に必要な資金がどれくらいで、どのような手段で準備するのか考えておきましょう。
すべて自己資金で起業したい
〇〇円ほど足りないので、融資を受けたい
補助金や助成金の対象となるよう起業したい
など。
融資を受けるのか、助成金を受けるのかにより、その先の相談窓口も異なります。
資金に関する相談を行う場合は、どれくらい自己資金が出せるのか、いくら足りないのかを明確にすることが必要です。
・実現可能な事業計画
まずは、自分で実現可能な事業計画を立てておくことが大切です。
相談先はたくさんありますが、最終的な判断は自分で行う必要があるためです。
きちんと計画を立てた上で相談することにより、見直すべき点がはっきりします。
「どれくらいの期間で起業するのか」「いつまでにどれくらいの利益を得たいのか」な ど、できるだけ具体的に計画を立てておきましょう。
中小企業診断士ってどんなひと?
ひとことでいえば「中小・小規模経営者の味方」です。
中小企業診断士は、日本での経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。
経営戦略、組織・人事、マーケティング、財務・会計、生産管理、店舗運営、物流、経済学、IT、法務と非常に幅広い分野の知識の他、問題解決力や説得力の基礎となるロジカルシンキングなど、コンサルティングに必要なスキルを習得しています。
2015年12月に公表された、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、「AIによる代替可能性の高い職業」というテーマで、中小企業診断士は0.2%しか代替できないと発表されました。
・数字に表れないものを読み取る能力
・高いコミュニケーション能力
中小企業診断士の有資格者はこの二つの能力を有している人が多い、というのが大きな理由です。
一般社団法人中小企業診断協会のホームページ
まとめ
よき相談相手は経営者のストレスとプレッシャーを軽くしてくれます。
自分のビジネスを成功させるためにはよき相談相手を探し、親身にあなたのことをサポートし、一緒に考えてくれる方とめぐりあうことをお祈り申します。
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